授業紹介 – ガラス工芸 –

2010年、6年生からハワイのPunahou School に通い、卒業後は日本の大学の国際教養学部に通っています。ハワイでの高校生活や、普段の生活を通して感じた事、体験した事をみんなとシェアしたいと思います。

プナホウ高等部を卒業するためには、美術か音楽を2年分履修しなければいけません。私は写真(記事はこちら)とガラス工芸の授業を取りました。今回はガラス工芸の授業について紹介しようと思います。

ガラスの授業は高等部の中でも11、12年生(高2、3)しか履修出来ない授業なので、他の学業が忙しくなる時期と重なり、履修する生徒はあまり多くありません。それでもアートに興味のある生徒や、実際に履修した生徒の評判はとても良い授業です。

どんな授業?

ガラス工芸の授業も、写真のクラスと同様に課題が山のようにあります。同級生に聞いた話だと、他の美術の授業に比べても多いようです。課題を全て提出しないと高評価にはならないので、ガラスの授業でA評価を取る生徒は少ないです・・・。私が履修する美術の授業は、なぜこんなに課題が多いのでしょうか(苦笑)。

課題の一部

とにかく課題は多いです。よほど不器用でない限り難易度はそれほど高くないのですが、数で言えば1年間の授業でグラス5つ、丸形のペーパーウェイト8個、ボウル2つ、花瓶1個、ワイングラス1つ・・・といった感じでしょうか。
グラスやペーパーウェイトは作り易く、見栄えもいいので個数が多いのでしょう。

因みにミニサイズを作っても評価は変わりません。小さく作ってもいいと聞くと「その方が簡単なのでは?」と思うかもしれませんが、ガラス作品は繊細で、小さく作ろうとすると余計に崩れやすくなるので、ここは個人の好みと技術によります。小さな飾り用の作品を作る方が上手な人はいますし、もちろん大きくて実用的な作品を作るのが上手な人もいます。

グラス

ガラス工芸の授業は美術の授業としては珍しく、評価の約9割が課題の提出ときちんと実用性のある形を成しているかがチェックされるため、指定された個数を提出さえすれば高評価に繋がります。残りの1割は、全体の出来と作成過程でついてしまった傷などをきちんと削り落としたかが評価の対象になります。(削り落とすための専用の機械があります。)

忍耐が強いられる授業

さて、何故課題を全て提出できる生徒が少ないのか。まず、他の授業や大学受験の準備が忙しい上に課題の数が多い、というコンボが多くの生徒にとって厳しいのもありますが、最大の理由は多大な集中力が必要であることと、扱いが難しいガラスの特徴にあると思います。

ガラス作品を作る時は、吹き込み棒を使います。持ち手側の先端に穴があり、息を吹き入れることで溶けたガラスを膨らませる事が出来るのです。

ガラスは熱い内に作業をしなければいけないので、作業中に小まめにガラスを釜に入れて温めなおさなければいけません。これが熱い!かなりの高温じゃないとガラスは溶けないので、釜の熱で腕は痛いし、低温やけどになる可能性もあります。やけど防止の為「スリーブ」という耐熱アームカバーを腕につけますが、防ぎきれない熱が伝わってくるので熱いことに変わりはありません・・・。

ガラスは少しでも冷たくなると唐突に割れたり、溶けて崩れ始めてしまうので、一度作業を始めたら完成するか崩壊するまでは休憩出来ません。

ペーパーウェイト

一番作りやすいペーパーウェイトでさえ1時間位はかかるので、もっと難しい作品になると、授業時間の2時間ずっと、または授業が終わった後も作業を続けなければいけません。もの凄く熱い中長時間集中力を保つのは大変!更にガラスはとても繊細な素材なので、何かの拍子にすぐに壊れてしまいます。これが何回も続いたり、完成間際に起こると本当に心が折れます(苦笑)。

最後に

熱い、疲れる、心が折れる。この三拍子に諦めて来なくなってしまう人や、あまりいい成績を貰えない生徒が毎年多数います。それでも尚、この授業は生徒からの人気が高いです。

私が知る限りでは、ハワイ、更にアメリカでもガラス工房の設備がある学校はとても少ないです。よって、「他とは違う特別な事をしている」という気持ちを感じることができると思います。

色々なものが進化した現代でも、ガラスは昔ながらの技術で、全て手作業で作らなければいけないのです。代々受け継がれてきたアートの技術を練習して習得する喜びや、自分の手で一から作り上げる楽しみもあります。ガラスの特性上、他の素材を使うアートに比べて大変なので、その分喜びも格段に大きいです。あまり一般的なスキルでもないので、作った作品を売ることも贈ることもできますしね。

全てのガラス作品は努力、忍耐、創造性、汗と涙が詰まった結晶なので、自分の作品に誇りを持ち、「また頑張ろう」と病みつきになるのが、ガラス工芸の持つ一番の魅力だと思います。またはただ単に、ガラス工芸を履修する生徒はみんな自分を追い込むことが好きなかもしれません(笑)。