アメリカの教育
2010年、6年生からハワイの Punahou School に通い、卒業後は日本の大学の国際教養学部に通っています。ハワイでの高校生活や、普段の生活を通して感じた事、体験した事をみんなとシェアしたいと思います。
アメリカの教育の特徴として、次の3つの要素は欠かせません。
1. エッセイ(自分の考えや感想を、証拠や根拠を織り交ぜて効果的に述べる作文・レポート)
2. 社会学や科学の授業でよく使われる、研究結果の発表と自分の考えを述べる作文
3. 言葉で上記の内容を人に伝えるプレゼンテーション
そしてこれらの教育は小さい頃から始まります。
最初は簡単に
自分の想いを他人に伝える練習は、小学生から始まります。もちろん最初は簡単な事からです。週末に家族として楽しかった事を3文書いたり、お気に入りのおもちゃを持って来て、どうして好きなのか、どういう経緯で手に入れたのかを簡単にみんなに紹介する「Show and Tell」などがよく行われます。
礼儀正しく聞くようにと先生に言われ、みんなきちんと聞く努力はしてくれますが、「声が小さくて聞き取りにくい」、「何を言っているのかよくわからない」などの指摘は小学生だからこそ、容赦無く飛んで来ます。文章もクラスメイトと交換して、お互いにアドバイスをし合います。それで終わる時もありますが、アドバイスを元に改善して再度提出することもあります。
経験を積むにつれ上がる難易度
小学生から始まる長い道のりなので、これらの分野を練習する機会はたくさんあります。年齢を重ねるにつれて経験も増えていくので、学年が上がるごとに、もちろん課題は難しくなります。
例えばアメリカ史の授業で、アメリカがどのような影響を受けて第一次世界大戦参戦を決断するに至ったか、考えを述べる作文を書く。科学の授業でキャンドルだけを使って卵を茹でる実験を行い、試した方法、結果、なぜその結果に至ったのか考察をまとめたレポートを書く。日本語学の授業で、日本とアメリカの学校の違いを全て日本語で述べるプレゼンテーションを行う。
中等学校ともなるとこういった課題がよく出されます。自分の感じた事や経験した事を他人に伝えるという、基本的な部分は変わりません。けれど知識と経験が身につくにつれ、ただ発信するのだけではなく、インプットされた情報をどう自分なりに解釈してアウトプットできるか、に重点が置かれるようになります。
教育とそこから生まれる文化
自分の考えや想いを伝える課題は、高学年になるとより難易度が上がり、種類が増えていきます。これは知識が増えることに伴って、その知識を証拠や根拠として使い、自分の考えをより理論的に、より効果的に伝えられるようにするためです。自分の力で考える事はとても重要だと考えられていますが、証拠を提示し、他人に理解してもらうことを更に重視する教育方針の表れです。
作文やプレゼンテーションを通して見えてくる事は、アメリカの教育方針だけでなく特有の文化でもあります。指摘しあってお互いを高め合い、理解していく文化です。
小学生の頃は容赦なく、けれど限りなく正直な指摘が貰えます。ショックを受ける生徒もいますが、スキルが一番伸びるのもこの時期です。年齢が上がると誰にでも厳しいことは言わなくなりますが、友達や家族、またはクラスメイトや先生に頼めば応えてくれます。指摘して貰えばどこを改善すればいいのか分かり、次の機会までに対策を考える事が出来ます。
指摘しあう事で、お互いの考えについて理解を深める事もできます。「何を言っているのかわからない」と言われたらもっと分かりやすく説明できるよう努力します。改善した所を「わかった!」と言って貰えたらあなたの作品がよくなっただけではなく、相手もあなたの考えを理解したという事です。
さらに、作文やプレゼンテーションは本人の考えによって成り立っているため、その人のことがよく分かります。
人によっては考えが異なり、衝突するかもしれません。それでも、違う意見や理論を聞いて学ぶことが出来るので、あなたの視野は広がります。物事を様々な観点から見られるようになり、大きく成長することが出来ます。
作文やプレゼンテーションの準備に追われるのは大変ですし、指摘の連続で落ち込んだり、自分の考えがうまくまとまらない時もあります。それでも、学生の世界を広げることで人として成長をもたらし、様々な所で適応できるようになるだけでなく、各々の個性をより確固たるものにしていくことを理念にこの教育システムは続けられています。