授業紹介 – 食品化学 –
2010年、6年生からハワイの Punahou School に通い、卒業後は日本の大学の国際教養学部に通っています。ハワイでの高校生活や、普段の生活を通して感じた事、体験した事をみんなとシェアしたいと思います。
プナホウでの理系の授業についてあまり書いていなかったので、今回の記事では理系の授業を紹介したいと思います。
理系と文系
プナホウの理系の授業は、文系より細かくレベル分けされています。例えば同じ「Algebra(代数)」や「Calculus(微分積分)」の授業でも、5段階のクラスがあります。理系が嫌い、または苦手な生徒達は一番易しいクラスを、理系が大好き、得意な生徒は一番難易度が高いクラスに挑戦します。
プナホウは小中高一貫校なので、教養科目を含めてバランス良く学ぶことを重視していますが、高等部は色々な面で大学に近く、授業選択の幅が広い点もその1つです。この先理系を取らないと決めている生徒は、易しい授業で理系の必要単位を満たしても特に支障はありません。
文系科目は理系ほど細かくレベル分けされていませんが、同じように難易度の異なるクラスがあります。ただ、国語だけは制約が厳しく、最終学年まで授業をとる必要があります。自分の国の言語に関わる事は深く知っているに越した事はありません。
クラシックと呼ばれる本(日本で言う古典)から当時の歴史や社会を学び、近代の作品からも様々な考え方や物の見方を学んで自分の思想を見つめ直す。文章で自分の考えを効率よく伝える、他人とコミュニケーションをとる。
学生として人として、国語を学習することはとても重要だと考えられているので、国語だけはどんなに嫌いでも最後まで頑張らなければいけません。
Food Chemistry
日本語で書くと食品化学になりますね。
理系の授業は難しいと言われるものが多く、特に3大メインの生物、化学、物理(この中でプナホウの最難関は物理と言われています)はかなり難しいです。
私はその3つのクラスも取りましたが、プナホウでは他の科学の授業も充実しているので、せっかくだし何かユニークな授業を取りたいと思っていました。そこで、仲のいい科学の先生が食品化学のクラスを担当をしていると聞いて履修しました。
因みにプナホウでは他にも海洋科学、環境科学、天文学等のクラスもあります。数学はコンピュータサイエンスと統計学以外、一般的なクラスしかありません。
どんな授業?
さて!最近前置きが長いですが、食品化学の話に入ります。名前の通り、食品を通して化学を学ぶ授業です。サイクル(6日間)に2時間の授業が1回、1時間の授業2回の授業構成です。
2時間授業では、実際にパンケーキ、パン、チーズ、アイスクリーム等の食品を作って、調理の過程を通してどのような化学反応が起こって食べ物が出来上がるのか観察します。
例えば何がパンケーキを膨らませる要因なのか、どのようにアイスクリームを作れば一番クリーミーになるのか(材料を氷袋に入れてこねたり、卵を入れてミキサーにかけたりしました)などを実験します。
作った物はもちろん食べられます!嬉しい!
1時間の授業では、YouTubeのビデオや先生の講義を通して学びます。またパンケーキの例を使うと、ベーキングパウダーを増やすとパンケーキがもっと膨らむ事を実験で観察しました。よって、膨らむ要因はベーキングパウダーであると仮定します。その後、フォローアップの授業ではベーキングパウダーとオイルが混ざる事によってアルカリ性と酸性が合わさって、二酸化炭素が出来る事を習います。
課題の実験レポートでは、実験の概要と実験によって立てられた仮説、その仮説を習った事や調べて集めた証拠を使って説明します。パンケーキの例だと、料理で作られる二酸化炭素は水分に囲まれた泡を作ります。その泡が沢山出来るとパンケーキに高さができ、食感がフワッとします。これらの情報をまとめ、自分の論理を証拠とともに提出するレポートが評価の対象になります。
最後に・・・
私は食べ物に興味がありましたし(食べる事も作る事も好きです)、既にとっていた一般的な化学の授業も好きでしたし、担当の先生とも仲が良かったので、あまり深く考えずこの授業を履修しました(笑)。でも、普段目に見えにくく、日常生活に当てはめにくい化学の要素を、毎日行う料理を通して学ぶのはとても楽しかったですし、有意義だと思いました!
冒頭で触れたように、プナホウでは科目の得意不得意によって難易度の異なるクラスを選ぶ事は出来ますが、日本のように文系・理系がはっきりと分かれているわけではないので、完全に振り切って1つに絞るという事は出来ません。
ハワイにこのような学校が多いのは、日本とは受験制度が違うため、それに対応して教育環境も違うということでしょう。
結果として私も友人達も、化学と言語、数学と国語等どちらの系統も好き、という人が多かったですね。このような背景もあって、プナホウでは理系文系の枠にとらわれず、ここで紹介した食品化学のように興味があって自分のレベルに合っている授業や、楽しく息抜きしながら学べる授業を取る生徒が多いように思います。