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Let’s ハワイ留学! – 留学生がハワイ州へもたらす経済効果

2017年7月に、Department of Business, Economic Development & Tourism Research and Economic Analysis Divisionより「The Economic Impact of International Students in Hawaii-2017」が公表されました。

2016年から2017年にかけての学年度に、留学生がハワイ州に与えた経済的影響をまとめた統計です。総留学生数、出身国、滞在期間、ハワイ州で消費した金額、ハワイ州の経済への貢献の見積もりが具体的な数値で示されています。ハワイへ短期の語学留学へ行ったことがある方もきっといらっしゃいますよね。その費用がハワイ経済に与える影響をレポートよりご紹介します。

留学生の出身国については「Let’s ハワイ留学! – ハワイ州の留学生出身国まとめ」をご覧ください。

留学生による直接的な経済効果

直接的な経済効果は学費、その他学校関連の費用、生活費の合計です。レポートでは、所属する教育機関の卒業を目指す留学生を長期滞在者、それ以外を短期滞在者として分けて比較しています。

表1は長期滞在者の、表2は短期滞在者による直接的経済効果です。レポートの対象に公立学校への留学生や海外からハワイへの修学旅行生は含まれていません。トレーニングプログラムは、フラなどの専門的な学校や語学学校が提供する短期間のプログラムです。

カテゴリー 学生数 学費と学校関連費用 生活費 合計 平均
(学費・生活費)
中高生 371人 $8,333,085 $5,514,600 $13,847,685 $37,898
($22,696・$15,201)
大学生 2,785人 $39,173,535 $41,790,151 $80,963,686 $29,202
($14,130・$15,071)
大学院生 705人 $30,353,909 $11,285,016 $41,638,925 $59,062
($43,055・$16,007)
合計 3,861人 $77,860,529 $58,589,767 $136,450,296(*2) $35,490

表1. 長期滞在留学生による直接的経済効果

カテゴリー 学生数 学費とその他費用 生活費 合計 平均
大学生 1,081人 $10,127,004 $7,481,838 $17,608,842 $16,289(*1)
大学院生 16人 $735,530 $382,720 $1,118,250 $69,890(*1)
トレーニングプログラム
(学生・社会人)
4,474人 $30,864,712 $25,411,035 $56,275,747 $12,578(*1)
サマーキャンプ
ウィンターキャンプ
1,150人 $5,096,608 $5,742,608 $10,839,216 $9,425(*1)
客員研究員 221人 $3,024,480 $3,024,480 $13,685(*1)
合計 6,942人 $46,823,854 $42,042,681 $88,866,535(*2) $12,788

表2. 短期滞在留学生による直接的経済効果

全留学生数は6,942人、そのうち長期滞在者は約36%、短期滞在者は64%。人数では短期滞在者が圧倒的に多いですが、経済効果は長期滞在者の方が大きいです。ただ、短期滞在を一度経験した人が次回長期滞在を選択する場合も多く、表中の数字には現れませんが、短期滞在者は架け橋として重要な役割を担っているようです。

留学生のカテゴリーで比較するとトレーニングプログラムへの参加者が全体の41%と多いのは、やはり短期語学留学者が多い事が反映されているのでしょう。

レポートによると短期留学生の1人あたりの平均年間消費(直接的経済効果)は$12,788、長期留学生は$35,490、全留学生では$24,139です。2016-2017学年度のハワイ州への直接的な経済貢献はおよそ$2億2530万となりました。滞在期間が個別に異なるためだと思われますが、レポートでは短期留学生カテゴリー別の平均消費額は示されていません。ご参考までに、学費とその他費用と生活費の合計を各カテゴリーの人数で割った数字を、1人あたり平均として表2中(*1)に付け加えています。

長期留学生のみ1人あたり平均の欄に学費と生活費の内訳を表示しました。生活費はどのカテゴリーも然程変わりませんが、学費が大きく異なることが分かります。私立のみの平均であることを考慮すれば中高と大学は比較的リーズナブルである一方、大学院はアメリカの中でも高額な印象を受けます。

留学生による総合的経済効果

レポートでは上記の直接的経済効果に、第1次波及効果(間接的経済効果:Indirect Impact)と第2次波及効果(誘発効果:Induced Impact)を加えたものを総合的経済効果とし、直接的経済効果に逆行列係数(最終需要係数:Final Demand Multiplier)をかけて求めています。逆行列係数はThe Hawaii State Input-Output Study: 2012 Benchmark Report (March 2016)のType II final demand multipliersを使用しました。

表3は、表1、2それぞれの合計(*2)を足した$225,316,831を直接的経済効果の総額として、教育サービス業界のそれぞれの逆行列係数をかけることで、総合的経済効果を示しています。

留学生の消費がハワイ州のすべての業界に与える影響は$4億8400万の生産高となり、州政府には$3200万の税収入が発生した計算です。また、留学生の消費に起因する世帯収入は$1億9200万にのぼり、5093の職が創出されたとしています。

逆行列係数(Type II) 経済効果(Type II)
総産出額 2.15 $484,431,187
総収入額 0.85 $191,519,307
総州税額 0.143 $32,287,902
1年間で創出された職(2016) 22.6 ($100万あたり) 5,093

表3. 留学生による総合的な経済効果

経済的な影響は、数字だけ提示しても少しイメージしづらいかもしれませんので、ハワイ全体のデータと比較してみましょう。2016年のハワイの18歳以上の人口が約112万ですので、約0.45%の社会人が留学生の支出によって生み出された職についています。また、2016年のハワイ州の個人収入合計は約$72.2億ですので、そのうちの約0.26%が留学生による経済効果です。全く別の資料から拾ってきたデータで定義も曖昧ですので、確かな数字ではありませんが、割合として大きくない事が分かりますね。

海外留学の動向

このレポートは2009、2015、2016年にも発行されており、昨年のデータと比較すると、大学と大学院の留学生の数は短期長期ともに減少しました。大学や大学院が提供する留学生対象の奨学金が減少傾向であり、学費の上昇も続いている事が要因のようです。一方で中学・高校の長期留学生数、サマースクール・ウィンタースクールへの参加者数は昨年よりも増加しました。

この2つの傾向は、ハワイ州に限らずアメリカ全体に共通するものです。より早い段階からアメリカの学校環境に身を置くことで、アメリカの大学、大学院などの高等教育へスムーズに進学しようという考えの広まりが背景にあるようです。今そういった目的を持ってアメリカの中等教育に通う留学生が、その意図通りにアメリカ国内の高等教育機関へ進学すれば、現在減少中の大学・大学院への留学生数も今後復活するかもしれません。中学や高校での長期留学は、保護者、本人の両者とってなかなか勇気のいる決断ですが、見合った成果が得られるのであれば、十分に検討に値するのではないでしょうか。

BIHI
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