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ハワイの飲食業 人材確保に難儀

失業率の低さと飲食業界の成長が同時に進むハワイでは、飲食業界の人材の不足が著しい。店舗が求めるレベルに見合った人材が見つけられず、離職率も高いことに雇用者は難儀している。

  • 歴史的な失業率の低さゆえに人材確保が難しく、被雇用者の売り手市場。
  • 雇用者は、人材やサービス以外の面からの顧客アプローチにも力を入れている。

人材の確保と維持

不足する人材

人材の不足は、過熱する店舗間の競争や人件費、材料費の高騰を抑えて、ハワイのサービス業界で一番の問題となっている。ハワイにYauatchaとHerringboneの2つのレストランを展開するHakkasan Groupや、Four Seasons Resort Oahu at Ko Olinaの飲食部門も同様の状況にあり、「優秀で雇用者が求めるレベルを満たし、店のブランドを理解して、良いサービスを提供する努力をする従業員を見つけることが一番の難関。」と話している。

複数の店舗を掛け持つ従業員もいるが、雇用者にとっては複雑な心持ちだ。「従業員を様々な店舗で使う状況は、店のブランドの側面から言えば良いことではない。顧客が会いに来るような良いサーバーと良いサービスはブランドに帰属してほしい。それでも多くの飲食店が従業員をシェアしていることは確か。」

被雇用者優位

この状況により、雇用者は従業員により柔軟に対応しなくてはならなくなった。これは離職率を低くするための努力でもある。ある店舗のオーナーが次のように話すように、雇用者は従業員のシフト希望を第一に尊重するようになっている。「私が若かった頃は、1日休んだらクビだったが、今では無断でサボっても何回でもチャンスが与えられる。店は人材を失いたくないからだ。」

問題はホノルルの市街地だけで起こっているのではない。Four Seasons飲食部門で約400人を管理する担当者は、(ワイキキから離れた)オアフ島の西側で営業するにはプラスもマイナスもあると話す。街まで通勤したくない西オアフの住民を雇うことができるが、労働者の数は限られている。ホテルにとって課題は人材の保持だ。「結局大事なのは離職率を低く保つこと。人材不足により、レベルの高い人材がいない市場で生き抜くには、今いる人材を大事に育て、長くいてもらうしか方法がない。」

人材のクオリティ

従業員に関しては、技術よりも人柄ややる気が大事な場合もある。飲食店オーナーは「競合店舗に打ち勝つ、質の高いサービスを提供する意志があること」が重要だと話す。「それを従業員が常に保ち続けるようにするには、多大な労力が必要。より高みへ行こうという意志と情熱を持った人材を見つけることが難しい。」また、こういった情熱はアメリカ本土により共通して見られると話す。「バーテンダーやサーバーを専門職と捉え、職業として極めたいという人材が多い。ハワイではそれはただの仕事で、形だけだ。業界には現状に満足している人が多く、自己満足はホスピタリティの敵。」

従業員が仕事を面白いと感じ、情熱を持っていると、離職率が下がるだけでなく顧客との関わりが改善され、顧客ロイヤリティも向上する。「1店舗が閉じる間に5店舗がオープンする」ような状況では、顧客がリピーターとなるか否かは大きな問題だ。

新規顧客の取り込みと定着

一方で、雇用者側は安定しない従業員の数と質とは別の面からの顧客へアプローチも行っている。

口コミによる新規取り込み

飲食店にとって、まずは新規の客に来店してもらうことが第一歩。特に新規顧客を対象としたマーケティング戦略を立てている店も多い。大型の店舗ではハッピーアワーを設け、新しいイベントを定期的に行って、顧客に新しい体験を提供できるようにしたり、ソーシャルメディア、インフルエンサー、雑誌、ラジオなど何でも使う。

だが、店舗の規模に関わらず、最も大きな力を持つのが口コミだ。特に宣伝費のない小さな店舗ではそれがすべてと言っても過言ではない。例えば、Nalu Health Bar & Caféは、良いサービスと写真を撮りたくなるような店にすることだけを考えた。結果、日本の有名なブロガーがレストランの画像を投稿し、顧客が大幅に増えた。

観光と飲食

「culinary tourism」(食を目的とした観光)が成長を続け、口コミが旅行者と地元の人々の両方にとって重要になっており、従来のようにどちらかを意識した店である必要はなくなっている。「旅行者は地元の住民と同じものを体験しようと店を訪れるが、ローカルは新しいものを求めて旅行者が集まる店にくる。」

食事が観光の大きな一部であり続ける限り、旅行者は島のあちらこちらへと出向くだろう。「旅行者がワイキキを出てカカアコを訪れるようになり、この先はカリヒまで地元住民が食べている食事を求めて足をのばすようにになるかもしれない。」

ハワイの事情

商品については、飲食店は流行に敏感であるべきだが、それに縛られるべきではない。特にハワイで客の需要に応えるためには、地元の商品に焦点を当てることがほぼ必須となっている。利幅のバランスを考えて、地元の食材と輸入品を組み合わせて使う店も。「オーガニックで地元で採れた食品を食べたいと考える人は多いが、そのために多く払うかというとそうでもない。」

また、地元の食品を多く使うことは流通量の面でも難しい。大型の店舗では使う食材の量が多く、供給者がその量をカバーしきれないこともある。それでも、流行を先取ることよりも地元の食材を使うことは大事だと賛同する声は多い。流行に関して、ハワイはアメリカ本土と数年のラグがあるという。「流行に合わせてすべてを変えるのではなく、少しずつ絶え間なく変え続けて人々の興味を引き、再来店を促すバランスが大事」と人気店のオーナーは話した。

(パシフィック・ビジネス・ニュースより引用)

コメント

日本でも飲食業界は慢性的に人手不足で、一時はチェーン店での負担の大きすぎる働き方などが問題になりましたね。あまり想像がつきませんが、ハワイでも「ブラックバイト」的な問題が発生していたりするんでしょうか・・・。ーユーコ

ハワイに限ったことではありませんが、売り手市場による接客・品質クオリティの低下が心配ですね。ーKID

BIHI
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