近年アメリカの大学授業料の高騰は凄まじく、頭を悩ます家庭は多い。それはハワイでも同様だ。打開策として、コーディング・スクール「Devleague(デブリーグ)」が中学・高校の授業の一環としてコンピュータ・サイエンスを教える取り組みを開始し、注目を集めている。中学・高校在学中にコンピュータ・サイエンスを学ぶことで、高校卒業後にエンジニアとしての就職など、キャリアを持ちながら大学進学以外の道を選ぶことができる。その活動と需要について「Devleague」のナタリー・ラミアエズ・ディレクターに話を聞いた。
「Devleague」とは
「Devleague」は、3ヶ月間のフルタイムまたは6ヶ月間のパートタイムで、ジャバスクリプトやサイバーセキュリティの分野で一定水準のスキルが習得させることを目的に、2014年に開校した。これまでの卒業生は200名弱となり、アメリカのマイクロソフト、グーグル、アマゾン、アップルなどのシリコンバレーのIT系会社に就職した実績も多い。2017年卒業生は、卒業後半年以内に83%が就職した。
もともと社会人を対象とした教育機関だったが、成人した学生を教えていくうちに、創業者たちはもっと若い年代からソフトエンジニアやコンピュータに興味を持ってもらいたいと考えるように。2014年から準備を始め、2016年にはプナホウスクールのサマースクールを始め、マリノールなどの私立学校でコーディングを教え始めた。
学校の正式なカリキュラムに
現在は2つの中学と5つの高校で、年間を通して教えている。それらはオアフ島の公立学校であり、キャンプベル高校、カポレイ高校、ルーズベルト高校などが挙げられる。各学校で内容は多少異なるが、例えば、ルーズベルト高校ではサイバーセキュリティ、ワイパフ高校ではサイバーセキュリティとウェブディプロップエント、ハワイ・バプティスト・アカデミーではウェブディプロップメントなどを教えている。
「Devleague」が提供する授業は、ハワイのDOE(Department of Education)から学校の正式なコンピュータサイエンスの授業として単位が認められ、「Devleague」の教師が各学校で教えている。25名から30名ほどのクラスに2〜3名の教師がついて、生徒同士が切磋琢磨しながらプロジェクトを一緒に仕上げてゆく。最終的には仕事にできるレベルまで持っていくのがゴールだ。コースにはレベル毎に分かれており、初心者コースであれば誰でも参加することができる。
人材不足のIT業界と職のない大学卒業生
冒頭で述べた通り、アメリカの大学の授業料の高騰は日本の大学とは比にならない。加えて、大金を費やして大学を卒業しても就職口が保証されているわけでもない。「Devleague」の共同創業者であるラッセル・チェン氏が大学を卒業した20年以上前は、卒業と同時に就職先の話が3つ4つはあったという。それが普通であったが、現在は1つの職を見つけることすら簡単ではない。その上、卒業ごは大学費用のローン返済が待ち受けている。
現在、サイバーセキュリティを含めて、インターネットエンジニアの求職数と、その能力を持った人材の数には大きな開きがある。需要が非常に高いにもかかわらず、人材の供給が全く追いついていないのだ。その一方で、4年制の大学を6年かけて卒業する人が32%、そして大学卒業生の45%は就職できない、もしくは軍に入隊する。
2017年度のアメリカの私立大学の平均授業料は$34,740、2025年までには$62,000ドルまで上昇すると予測されている。この数字が実際のものとなれば、一般の家庭では4年生大学に子供を送り出すことが難しくなってくるだろう。大学授業料の高騰、IT関連の技術者の不足、大学を卒業しても職がない状況の中、登場したのが中高校生のための「Jr.DevLeague(ジュニア・デブリーグ)」である。
エンジニアとしての未来を
「Jr.DevLeague」では、ただ教師が理論を教え込むのではなく、生徒が実際に手を動かしてプロジェクトを完成させる。これまでは確かなキャリアのためには、高い学費を支払って4年制大学に行くという選択肢しかなかったが、中学・高校で新しいコンピュータの技術を習得することで、カレッジへの進学や就職という新しい選択が増える。
「Jr.DevLeague」は既に、これまでに13の私立、公立学校において延べ600人の学生を教えてきた。
「Jr.DevLeague」で学んだワイパフ高校の生徒は、高校卒業前に現地の会社への就職先を獲得した。別のワイパフ高校の生徒は、2018年の「AT&T Hackathon(AT&Tハッカソン)」イベントにて、ゲームとその環境の部門において2位を獲得。ルーズベルト高校の生徒も「Girls Go Cyber(ガールズ・ゴー・サイバー)」イベントで4位に入賞。着実に成果を出し始めた「Jr.DevLeague」に今、注目が集まっている。