結婚を機にハワイへ越した武田麻美(たけだ まみ)さん。大学時代はフルート奏者として勉学し、ハワイではオアフシビックオーケストラの一員として活動していた彼女が、20年前不動産業界に入った。武田さんの仕事とハワイの不動産業界についてお話を伺った。
子供のための引越しを機に不動産業界へ
武田さんがハワイへ移ったのは1988年。移住当初はオアフシビックオーケストラでフルート奏者として活動したり、長く携わったピアノやフルートを教えて過ごしたが、お子さんが二人となった時に転機が訪れた。お子さんが遊べるような庭のある家を持ちたいと、カハラからハワイカイへの引越しを決め、リアルターにいろいろな物件を紹介してもらううちに、「あ、こんなお仕事楽しいな」と思ったそう。
ココヘッドから見下ろすハワイカイ
英語上達のためには、もっとコミュニティに入っていくべきだとご主人に言われたこともあり、それならハワイで不動産免許の取得をしようと決断。早速地元の人たちに混ざって不動産の資格取得のため学校へ通った。まだお子さんも小さく、引越し後の慌ただしい生活の中、不慣れな英語を使って学校に通った当時は大変だったという。「とにかくまだ若かったこともあり、あの忙しい日々を乗り越えられた」と当時を振り返る。
リアルターとして順調な滑り出し
努力の甲斐あり、98年には不動産リアルターとしての資格を取得。自宅購入の際にお世話になったチョイ・インターナショナルで、不動産リアルターとして働き始めた。その後はカハラ地区の戸建てを中心に仕事を広げていった。
今はクラアントの8〜9割が日本またはハワイ在住の日本人、他をハワイのローカルの人とアメリカ本土の人が占める。チョイ・インターナショナルに勤めていた頃は、当時銀座の不動産王と呼ばれた方のエージェントとして、1件19億円から22億の大きな売買を成立させた。武田さんは売買を中心に扱うが、物件管理を望むクライアントの要望にも応えられるよう、CPAや弁護士、管理会社、修繕会社との繋がりも大事に、いつでもご紹介出来るようにしている。
リストサザビーズへの転職
昨年ヘッドハントされ、20年間働いたチョイ・インターナショナルから、上席副社長としてリストサザビーズインターナショナルリアルティへ移った。
オフィスにて
ハワイ不動産は価格が安定しており、リーマンショックの影響もほとんど無く復帰も早かった手堅い資産だ。しかし、中にはハワイだけでなく、東南アジアへの投資を希望するクライアントもいる。その点リストサザビーズは香港やシンガポールにも拠点を持ち、世界に2万以上のエージェントを抱えていることが大きな魅力であり、他の世界も覗いてみたいと思ったのが転職の決め手だったという。
ハワイ不動産の魅力
ハワイに別荘を購入した武田さんのクライアントは、次のように話したそう。「インターネットの普及によりどこでも仕事ができるものの、東京などにいるとアポが入ってしまい、振り回されがち。ハワイではそんな煩わしさから解放され、クリエイティブな精神を伸ばすには最適な場所。」
オフィスに置かれた物件紹介
先日、20年前武田さんがエージェントを始めたばかりの頃に手掛けたカイルアの物件を偶然、また売買するというめぐり合わせがあったそう。その金額はなんと倍以上になっていたとのこと。カハラでもハワイカイでも、この20年で価格が2倍〜3倍に上がっている物件が多々あるという。「この先また2倍近くの伸びがあるかは分かりませんが、下がっていくとは考えにくい」と続ける。
こんな事に気をつけて
ハワイ不動産の購入にあたって「考えすぎて夢が叶わないことにならないように」と話す。何年も決断できないまま値段が上がってしまい、最終的に諦めた人もいる。
「大きな買い物ですからよく考えることは必要ですが、考えすぎないように。不動産も結婚と同じです。相手の全部を分かって結婚する人は少ないと思います。ある程度勢いも必要ですよね」と続ける。購入後、良くないと思ったら売ることもできる。「いい物件に出会うチャンスを逃して欲しくありません。そのためにはいいリアルターと出会うことです」と武田さんは言う。
また、物件にかかる月々のメンテナンス費が高いと感じる人が多いという。もちろん諸々の費用について事前に丁寧に説明するが、購入後毎月引き落とされる額を見て、改めて実感することもあるようだ。だからこそ、1年に1回好きな時に使いたいからホテルコンド、物件は完全に投資用、など、物件や購入のスタイルについてよく話ができるエージェントを見つけることが大切だ。
ハワイでの子育て&趣味
ハワイでお子さんを2人出産し、育てた武田さん。ご自身はハワイで教育を受けていないため、学校の評判が分からなかったが、お子さんたちは世間でいいと言われる学校へ通わせてあげたいと考えた。
ハワイ屈指の名門校、イオラニスクール
「イオラニやプナホウなど、進学校と言われる学校に多く進学するプリスクールに入れるため、子供が生まれた次の日にはそのプリスクールへ申し込みました」と話す。
その結果、お子さんは2人とも幼稚園から高校までイオラニに通い、その後アメリカ本土の大学へ。1人は既に卒業し社会人、もう1人は在学中だ。
武田さんは趣味も多く、今でも週1回はワイアラエのゴルフコースに出る。その他にもフラダンス、乗馬、カヤックなどを習ったこともある。美味しいものには目がなく、飛行機に乗って食べに行くことも。
ハワイ不動産業界 – 武田さんが見る今後の動向
最後に最近の不動産業界についてお聞きした。「2つありますね。1つは、以前は高いと思われていたカハラ地区がこれからまた注目されるであろうこと。もう1つは350スクエアーフィート(約32.5平方メートル)から組み立てられる『ベントウハウス』です。『ベントウハウス』は必要最低限のものが揃う小さな居住空間で、生活のシーンに応じてテーブル、キッチン、ベッドなどを壁の中に収納してスペースを活用できるような近未来的な物件です」と武田さん。
例えば最近売りに出された、カカアコのコンドミニアム「‘A’ali’i(ア・アリイ)」などは、小さなベッドルームだけがプライベートエリアで、パーティやエクササイズをするスペースはすべてコモンエリアと呼ばれる共有スペースを使うスタイルで注目されている。かつては、戸建ての広い家に友人や仕事仲間をよんでパーティを開くのが常だったが、それは共有スペースで済まそうという新しい提案だ。そのかわりプールや庭の掃除をする必要がなく、自分の寝るスペースだけをきれいにすればいいという手軽さが人気を呼んでおり、ハワイ不動産はまた新たなステージに向かっているようだ。